リトミックレッスン

カラフルな教本の落とし穴!?

 

ひと昔前は、教本といえば「バイエル」「ブルグミュラー25の練習曲」「ツェルニー練習曲集」定番でしたが、最近はピアノ導入書の教本の種類が大変豊富です。

日本で作られたもの、海外のもので日本語訳で出版されたものがありますが、以前からある教本でも再編集され新しいテキストに生まれかわるものも多々あります。

そんな中でもとくに最近出版されるものに多くみられる傾向は、きれいなイラスト付きのものです。

オーソドックスな教本「ブルグミュラー25の練習曲」、「ツェルニー練習曲集」「ハノン」なども、ミッキーマウスのキャラクターものが載っているものや、それぞれの曲に合わせたカラーのイラストが載ったものが出てきました。

  

カラーのイラストを用いた教本を使う場合の利点気を付ける点を考察してみたいと思います。

カラーのイラストが載った教本の利点

1、曲調についてイメージしやすい!

それぞれの曲調に見合った色やテーマのイラストが載っている場合、曲調を絵や色で表現されているので、生徒と曲調について考えやすいでしょう。

音楽美術作品は、それぞれ違った方法で表現していますが、表現したいものは似通っていることが多々あります。

よく演奏家は演奏するとき「映像」や「絵」を思い浮かべます。
逆に、画家などのアーティストは作品を描くとき「音」や「メロディ」を想像するそうです。

ちょうどですね。

教本に載っているイラストは、曲のイメージを持つときの大きなヒントになることが利点と言えるでしょう。

2、譜読みする前から、曲調を掴みやすい

新しい曲に取り掛かるとき、生徒の中には「おっくう」に感じてしまうことがあります。
曲のレベルが徐々に上がってきたときに最初にぶつかる壁です。

最初はどんどん進んでいけることがうれしくて、それが新たなモティベーションとなりますが、少しずつ難易度が上がるにつれ弾けない時間が長くなり、達成感を味わえる頻度が下がってきます。

テキストにイラストが載っている場合、新しい曲のページに載っているイラストを見て興味を魅かれたり譜読み前から曲の雰囲気を掴むことができるでしょう。

一番おっくうな「取り掛かり」のモティベーションアップにつながるかもしれません。

一方で、カラフルなイラスト入りの教本が思わぬ落とし穴を作る場合があります。

カラフルなイラストが載った教本の落とし穴

1、絵に気を取られてしまい、曲に集中しない

特に年齢が若い生徒の場合、絵のことが気になり、曲に集中できないので、レッスンにも集中できなくなってしまいます。
絵がカラフルだとインパクトも大きいので、気になってしまうようです。

とくに、キャラクターの絵がたくさん書いてあるテキストなどはキャラクターが気になるようです。

練習せずに来てしまったり、難しくて話題をそらしたいときのネタにもなってしまいます。
小さい生徒さんでも、回避能力は侮れません(笑)

年齢の若い生徒は、刺激を与えられるとそちらに集中してしまうという性質がありますので、それを利用してうまくレッスンを進行していかなければなりませんが、譜読みに集中したいときに、キャラクターにその集中を奪われてしまってはレッスンのペースを崩されてしまいます。

よく練習してくる生徒や、講師の話をもともとよく聞いてくれるような生徒は、イラストに気を取られず、レッスンに集中し続けてくれるかと思います。

2、曲調を自分で感じ取る力が養えない。

最初からイメージを与えられているので、譜読みをして弾いてみて初めて感じるものや、どんな曲調なのか感じ取っていくという作業は端折られてしまいます。

楽譜を読む前はただの白黒のページが、曲を仕上げていく過程でどんどん頭の中で色付けされたり、立体化されたりと、まるで命を吹き込むような作業を味わうことができます。

何度がその作業を繰り返し、その楽しみ、達成感を知っていれば、新しい曲に入ってもまたその楽しみを味わえるということを生徒に伝え、生徒がどのようにイメージをふくらましていくのか、どのように演奏に命を吹き込ませていくのか、講師も一緒に味わっていくことができ、この仕事の楽しみの一環になることでしょう。

カラフルな教本を用いる短所、長所をよく理解した上で、数冊の教本をうまく組み合わせて使ったり年齢によって、また生徒の性格によって使用するかどうか判断していくことをお勧めします。