実際にリトミックレッスンの内容を詳しく紹介していきましょう。
体験レッスンの事例
まず、初めてのレッスン(体験レッスン)についてです。
レッスンの長さ:30分
対象年齢:2歳後半〜3歳
1、簡単なビート打ち(約2分)
まずは教室に初めてきた生徒さんが恥ずかしがってなかなか講師の指示に従えないかもしれません。
そんなときはまず、簡単なビート打ちをします。
- おススメの打楽器:タンバリン・すず
オススメする打楽器は説明しなくてもとりあえずすぐに2〜3歳児が使えるものです。
- おススメしない打楽器:カスタネット・トライアングル
おススメしない理由は、どのように使うか?というところから説明しなくてはならないので、体験レッスンには向きません。
しかも、拍を合わせるという本題よりも、鳴らすことに気を取られることがありますので、簡単な楽器にするのがよいと思います。
レッスン例:
「今日はよくきてくれたねぇ~!」
と、打楽器を生徒に渡して
「さぁ、ピアノに合わせて、ならしてみよう!」と声掛けし、ピアノを弾きます。
この時の曲は元気の良い感じで、ビート感が分かるように四分音符の和音で演奏します。
生徒が恥ずかしがっている場合、保護者のすぐ近くに居させたまま行っても構いません。
もしも生徒がうまくできなかったら?
生徒がビートに合わせられていない時は、講師が演奏続けながら「トン♪トン♪」と頭を振りながらビートを歌ってみてください。その掛け声に合わせることができる生徒もいます。
もしくは、片手でピアノを弾き、片手で鈴をシャンシャンと鳴らしてもよいでしょう。
また保護者も一緒に叩いてもらっても構いません。
生徒は親を見て真似してすぐに出来るようになることもあります。
保護者に生徒の背中を音楽に合わせてトントンと軽く叩いてもらうことも効果的です。
しかし、体験レッスン中は、生徒がビートに合わせられなくても、あまり気にせずとにかく終始ニコニコして「そうそう!上手、上手〜!」と褒めまくるのがよいでしょう。
体験レッスンでは「出来る喜び」を味わってもらうことが第一です。
どんどんできる生徒にはどうしたらよい?
反対に簡単にこなす生徒もいます。
そのような生徒には、どんどん新しいことが出来るという喜びを与えられたら完璧です。
生徒の表情を伺いながら、少しずつ課題を難しくしていきますが、体験レッスンでは「少し」だけにしておきます。
生徒に「また教室に来て、もっともっとやってみたい!」と思わせるのも次へのモチベーションにつなげるテクニックの一つです。
ビート打ちの場合、テンポを変えてみて、生徒が付いてこれるか試してもいいかもしれませんね。
わざとものすごく速くしたり、遅くしたりすると笑ってくれるかもしれません。
*やりすぎには注意です。人見知りの恥ずかしがり屋さんにはいいかもしれませんね(笑)
2、四分音符と二分音符を使ったリズム打ち(約5分)
もっと特殊なリズムの導入を私は考えてやっていますので、そちらが2,3歳児には本当はおススメです。
よろしければ、その「リズム打ち」の導入に関しては、こちらを参照ください。
ここでご紹介するのは一般的な音符を使った方法です。
聞いて同じリズムを叩くものではなく、実際に音符を読んでリズムを叩くアクティビティです。
四分音符と二分音符が載ったフラッシュカードをそれぞれ用意しておきます。
四分音符のカードだけ見せて「この音符のお名前は四分音符です。これからこの音符のことを『しーぶん』と呼びましょう!」と生徒に伝えます。
「では、一緒にお名前呼んでみましょう」
『しーぶん!』
または、落ち着きのない生徒で話を長く聞いていられないようであれば、細かい説明なしで、カードを見せながら『これは、しーぶん!』とだけ言う方がインパクトがあるでしょう。
次に二分音符のカードを見せて、「この音符はしーぶんに似てるけど何か違うね?どこが違うか分かる?」とまず聞きます。
「たま」の部分を指差す生徒もいれば、黙ってしまう生徒もいれば、言葉で説明する生徒もいるでしょう。
いづれにせよ、この年齢の生徒には考える時間は短く取り、比較的直ぐにヒントを出し、正解を伝えます。
「ほら、ここを見てみてごらん?!」(音符のたまを指して言う)
「こっちは黒?こっちは白?」
「この『たま』の色が違うね?!」
ヒントや正解を伝えるときも疑問系で生徒にも『YesかNo』を一応考えてもらうのも大事です。
そうすることによって、生徒もただ一方的に教えられているのではなく、「先生と一緒に考えて答えを出した!」感を自然と感じるでしょう。
「では、この音符の名前は『二分音符』です。『にーぶ・おんぷ』と呼んであげましょう」(二分音符のカードを見せながら)
何度か一緒に「しーぶん」と「にーぶおんぷ」をそれぞれのカードを見ながら言う練習をします。
実際にリズムを読んでみる
次に四分音符と二分音符が組み合わさった実際のリズムカードを用意します。
「では、このリズムを一緒に読んでみましょう」と言って、それぞれの音符を指差しながら、音符を読んでいきます。
「しーぶん しーぶん にーぶおんぷ」
「にーぶおんぷ しーぶん しーぶん」
お気付きでしょうが、「しーぶん」と言うと、ちょうど一拍分になり、「にーぶおんぷ」と言うと、ちょうど二拍分になります。
まだ数字に怪しい年齢のため、拍を数えながらリズム打ちするのはもう少し後にします。
だいたいの子どもたちは、この「しーぶん」「にーぶおんぷ」のリズム感に好感的で、喜んでやってくれます。
生徒の反応がない場合どうすればいいの?
まだ恥ずかしがってやってくれなくても、講師はどんどん一人ででもやってください。
そのときは反応が薄くても、必ず講師のやる事を見ていて吸収しています。
やってくれないからと無理にさせたり、がっかりして途中で辞めないでください。
「今日は一緒に出来なくても、先生のことしっかり見ててね!」
と言って、先生が全部やってみせてあげてください。
最初は一人演技で恥ずかしいし虚しさを感じるかもしれませんが(笑)
簡単に出来た生徒は打楽器や手拍子で、実際にリズム打ちしてみてもいいかもしれません。
3、音読み(色ぬり)(約5分)
遠藤蓉子先生の「おんぷのおえかきワークブック1」を使い、ドとレの色塗りをします。
おんぷのおえかきワークブック 1(遠藤蓉子著)
「ド」は赤色を使いますが、この時「赤色のペンはどれかな〜?」と言って、赤色のペンを探させます。
色の名前を知っているかどうかのチェックです。
迷っていたらすかさずヒントを与えます。
「りんごやイチゴの色だよ〜」
まだ『ド』の音名は紹介せず、ドの音符に赤で色を塗ってもらいます。
ドを探す指示は色々と考えられますが、例えば「棒が刺さった丸だけ塗ってね」や「串に刺さったおだんごを探して赤で塗ってね」などはいかがでしょうか。
次に「レ」に移ります。
「レ」は黄色を使いますので、黄色のペンを探してもらいます。
「黄色はどれかな〜?レモンの色だね〜?!」
そして、「ただの丸に黄色を塗ってね」「串に刺さってないだんごだけ探して黄色で塗りましょう」と支持します。
大概の3歳児はうまくできます。
赤と黄色で色分けできたら、ココで初めて「ド・レ」という音名を紹介します。
「これはド〜」(赤丸を指して)
「これはレ〜」(黄色丸を指して)
出来ればこの時、ドのピッチで「ド〜」、レのピッチで「レ〜」と歌うように言います。
高い確率で、先生の発した声(ピッチも合わせて)を真似て生徒も「ド〜」「レ〜」と言ってくれます。
「『ドレミファソ』って聞いたことある?もうドとレを読めちゃったね?!」というと、親も生徒もニコニコです!
4、実際にピアノを弾いてみる(約5分)
早速、読めたドとレをピアノで弾いてもらいます。
遠藤蓉子先生は一番最初からピアノに対する姿勢を学んでおいた方がいいと薦めていらっしゃいます。ピアノを弾く前は必ず「椅子に座ったら両手はお膝」で待機してもらいます。
私は指の形も最初からきれいにしたいので、右手で左手首を軽く握ってもらい、そのままの形で鍵盤に移動させたり、左手のぐー(握りこぶし)を右手でふんわり包んでもらい、手の形を整えます。
先程生徒が塗ったドとレを見ながら弾くのもいいですし、「ゴーゴーピアノ1」の1番(ドのみ)を弾いてみるのもいいでしょう。
5、譜読みの復習とリズム(約5分)
『よくわかる幼児のおんぷとりずむ 1』を使って譜読み(ドとレの復習)とリズムの練習をします。
この歳のレッスンは、同じ内容のことを教材や道具を換えて何度も復習します。
この本は2ページでレッスン1回分になっており、とても使いやすいです。
6、歌、聴音(約5分)
『たのしいな 幼児のうたと音感 1』を使って曲一曲振り付けを付けて歌います。
この本には誰もが知っている有名な曲ばかり載っています。
たとえば、「ちゅうりっぷ」「ぞうさん」「ぶんぶんぶん」などです。
生徒がちょうどレッスンに慣れ始めた頃で一緒に歌ってくれることもありますし、やっぱり歌うのは恥ずかしくなることもあります。
親と生徒がペアになってやってもいいでしょう。
この本は、4ページでレッスン1回分です。
最初の見開き2ページで歌と振付が書いてあり、3ページ目には、簡単にできるリズムの聴音があります。
最後のページには簡単なメロディがあり、先生がまず歌い生徒にリピートして歌ってもらいます。
ココでレッスン終了でもいいですが、私は更にピアノを弾きながら短いフレーズを音名を付けて歌い、リピートしてもらって終わりにします。
7、お別れの歌(約1分)
私は独自にお別れの歌の歌詞を作り、メロディと振り付けを付けて毎回レッスンの終了時に歌います。
自然と生徒も真似して歌って振り付けをしてくれます。
8、ごほうびシール(約1分)
レッスンのごほうびにシールを貼ってもらいます。
私は、体験レッスン用のシール台紙を用意していて、その用紙に貼ってもらいます。
生徒がレッスンを頑張れたことがシールとして形になり、生徒は出来た喜びを味わってくれます。
9、保護者に今後のレッスン内容を説明する(約2分)
今後どのような内容をしていくのか大まかに説明し、将来のビジョンを掴んでもらえるようにします。
レッスンがうまくいかなかった場合は、「リトミックレッスンは30分のレッスンに慣れるためにしているので最初から完璧にできなかったり、集中が切れても大丈夫です。」などとフォローを入れることも大事です。
生徒が全く興味を示していないようであれば、もう少しレッスン開始を待ってもいいかもしれませんが。
レッスンがうまくいこうといかまいと生徒にはレッスンに来てくれたことに対する感謝の気持ちや「頑張ったね!」という前向きな褒め言葉を伝えましょう。
お分かりのように、どんどんアクティビティを変えてレッスンを進めていきます。
小さいお子さんの質の良い集中力は短いため、長くしてしまっては効果が薄れてしまいます。
同じことを学ぶものだとしても、道具を変えたり、場所を変えたりと違う方法でのアプローチをたくさん持っていると、よい集中力をたくさん引き出してあげることができます。
たくさんの引き出しを作っていくと、効率的なレッスンになっていくと思いますよ!